2026.07.23
「レシピ起こし」で国語力が伸びる理由|料理から始まる子どもの「書く力」〜全4回まとめ〜

「書く力」は、机の上だけでは育たない。
料理をして、レシピを書く。実はこれだけで、国語力を育てる要素がたくさん詰まっています。
Instagramで4回に分けてお届けした「レシピ起こし」のお話を、1つにまとめました。
レシピ起こしで育つ、文章を書くための土台
実はレシピ起こしのとき、子どもの頭の中では、文章を書くための土台となる力がたくさん働いています。
① 記憶する・覚えておく・思い出す力
まずは、料理を作った工程を覚えておきます。「最初は何をしたかな?」「どこに気をつけたかな?」これらを体験を振り返りながら思い返し、大切なポイントを整理していきます。
この「思い出す力」が、文章を書く最初の一歩になります。
② 順番を整理する力(論理的思考)
料理は、工程の順番がとても大切です。だからレシピを書くときも、「どの順番で書こうかな?」「どの構成が分かりやすいかな?」と考えながら、文章を組み立てています。
料理を思い出しながら、「まず何をした?」「次は?」「最後は?」と、一つひとつ整理していきます。頭の中で出来事を順番に並べる力は、作文や説明文を書く力にもつながります。
③ 相手に伝える力(客観的思考)
レシピ起こしは、「今度、自分が見ても分かるかな?」「他の人が読んでも作れるかな?」という視点がないと書けません。
低学年の子どもがレシピを書くと、「にんじんをここにおく」と書くことがあります。子どもにとっては、自分の目の前にあるまな板が「ここ」だからです。
9歳くらいまでは、子どもは主観的な見方が中心だと言われています。でもレシピを書くと、「読む人には『ここ』では伝わらない」ということに気づき始めます。
そんなふうに読む人を意識して書くことで、自分中心ではなく、相手の立場で考える力が育っていきます。この視点が育つことは、国語だけでなく、コミュニケーションの土台にもなります。
④ 必要なことだけを書く力(情報を整理する力)
レシピは、気持ちや感想を書く文章ではありません。大切なのは、料理をもう一度作れるように、必要な情報だけを分かりやすく伝えることです。
レシピは、「わかりやすく、短く」書くことが大切です。必要な言葉を選び、相手が作りやすいように文章にする。「伝わる文章」を書く練習が、自然とできるようになります。
この情報を選ぶ経験が、要約力の土台となっていきます。
一度に育てられる4つの力
このようにレシピ起こしでは、
・思い出す力(記憶力)
・順番を整理する力(論理的思考)
・相手に伝える力(客観的思考)
・必要な情報を選ぶ力(情報リテラシー)
という、文章を書くための土台となる力を、一度に育てることができます。
ココの杜では、「書きたくなる体験」を大切にしながら、さまざまなカリキュラムを作ってきました。レシピ起こしも、その一つです。子どもたちは楽しみながら、言葉で考える力を育てています。
さらに、実はレシピ起こしの本当の魅力は、それだけではありません。
料理が引き出した国語力。「やりたい!」が生まれた20分
料理に特に興味がなかった男の子のお話です。最初は、つまらなそうに小麦粉をこねていました。ところが…
できあがった豚まんを一口食べると、「人生で一番おいしい!」その瞬間から、別人のように行動が変わりました。
「忘れないように」と丁寧にレシピを書き始め、「かっこよく仕上げたい!」と、まだ習っていない漢字まで聞きに来ました。
さらに、「教室の掃除もするから、余った材料を持って帰ってもいい?」と先生に交渉。「今のうちに計っておけば、帰ってすぐ作れる!」と、材料をテキパキ量り始めました。
これらを、たった20分でやってしまったのです。この20分の間にその子は、
・自分のためにレシピを書く
・もっとよくしたいと漢字を学ぶ
・目的のために交渉する
・計量を通して算数を使う
どれも、「勉強しよう」と思って始めたことではありません。「また食べたい。」「自分でも作りたい。」その気持ちが、次々と学びを引き出していったのです。
このように子どもが「やりたい!」と思ったときの力は、大人の想像をはるかに超えます。
心が動く体験が、子どもの「学びたい」「挑戦したい」という力を育ててくれる。ココの杜ではその瞬間を何より大切にしています。
「レシピ起こし」が子どもに残してくれるもの
毎日バタバタで、終わりなんて来ないように思える子育て。
でも、子どもと暮らせる時間は人生の中ではほんのわずかで、気づけば、あっという間に自立の日がやってきます。
子どもが一人暮らしを始めたとき、親が気になることの一つが「食事」。そんな時、「簡単なものなら自分で作れる。」その力は、親にとって大きな安心になります。
さらに、子ども自身が料理をした経験があり、自分で書いたレシピがあれば、「久しぶりに作ってみようかな。」そんな一歩も踏み出しやすくなります。
料理は、やってみないと分からないことがたくさん
「今はネットで調べれば大丈夫。」そう思うかもしれません。
でも、料理は知識だけではできません。実際に手を動かした経験があるかどうかで、大きな差が生まれます。
ココの杜でも、料理経験の少ない子は、「少々」が塩を2〜3粒になったり、ラップがうまく切れなかったり、「キツネ色になるまで炒める」の意味がわからなかったり…
料理には、実際にやってみないと分からないことがたくさんあります。
だからこそ大切なのは、家族と一緒に料理をした経験。
「おいしかったね。」「また作りたいね。」そんな時間が積み重なると、料理は「やらなければならないもの」ではなく、「楽しいもの」になります。
世界に一冊だけのマイレシピ集
そして残るのが、子ども自身が書いた世界に一冊だけのマイレシピ集。
そこには、料理の作り方だけではなく、書く力や考える力、そして親子で笑った時間まで詰まっています。
いつか子どもが巣立つ日。レシピを開いて、「あの時、お家で作ったな。」そんなことを思い出しながら、また料理を作る日が来るかもしれません。
その一冊は、国語力だけでは得られない、生きる力と、家族の思い出が詰まった宝物にきっとなるはずです。

